南風原:そういう、「全体がだいたいわかっている」という感じの理解の仕方をしているようです。でもそれだと学問をする上では困る。ビジネスもそうで、契約とか交渉とか、肝心なディテールを間違ってはいけない。ところで、TLUと測定範囲を考えたときに、安河内先生がセンター試験の代替としてありうると思っているのは?

安河内:もっとも相関関係が高いのが英検2級だと思います。ただ、上位レベルの子はセンター試験では190点以上取りますから、差が測れない。となると難関大学に適した試験はTEAPおよびGTEC CBTではないかと思う。TLUはアカデミックでA2~B2を測定可能範囲とするもの。

南風原:もう一点、4技能均等ということに関して。いろんな理由でしゃべれない子がいるけど、1年生でそれで入ってきても別に大きな問題はないんですね。例えばリーディング(R)95点、スピーキング(S)5点で合計100点という子がいて、R50点、S50点という子がいるとする。R50点は学問的にはほとんど使い物にならない。本を読んだり論文を読んだりができない。でもR95点であれば、それをもとにスピーキングは伸ばせる。均等がいいという大学があってもいいが、R95点とS5点がいいという大学もあっていい。

安河内:大学・学部によって、求める技能が変わるので、総合の点数に加えて、技能ごとの下限を設けたらどうですか。

南風原:測定上、下限というのは危なくて、ちょっとしたミス、吃音などでもアウトになってしまうことがある。そこはまだ全体の合計のほうがいい。

安河内:透明性の問題でいうと、民間試験は評価ポイントが明らかにされている。半面、私大の試験、国立大の2次試験は、どんな意図で作られ、どう採点されるのかわからない。だから予備校が分析し勝手に推測するわけですが。入試改革を機会に、大学側には現場でよりよい英語教育ができるよう、さまざまな工夫をお願いしたいと思います。(構成/編集部・高橋有紀)

AERA 2018年3月5日号より抜粋