夫と二人暮らしの女性(41)は主婦。ひきこもりUX女子会の参加者の一人だ。中学時代に不登校になり、通信制高校を卒業後、22歳で障害者のグループホームに就職。31歳で現在の夫と職場結婚した。しかし、責任感が強い女性は家庭と仕事の両立を目指すあまりバランスを崩し、結婚から3年後、過労で倒れた。
「不登校をしていた時代からの性格なんでしょうか。夫がいない間に処方された薬を大量に飲んで救急車で搬送されたり、たまっていくばかりの家事を見るだけで自分に自信を持てなくなったり……。夫以外の人とどう接すればいいのかわからないまま、孤立してしまったんです」
厚生労働省のひきこもりの定義は、「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、外に出ない状態が半年以上続く」。内閣府の調査ではコンビニなどには出かけられる人も含めている。
ひきこもっているはずの女性たちが女子会に集まったのは、彼女たちの多くが、過去の経験から男性が苦手で、中には、「DV(ドメスティックバイオレンス)を受けた」などの事情を抱えているから。これまで、こうした状況から抜け出すための就労支援に重きが置かれていたが、彼女たちは就労以前に自分の体験を他の人と分かち合い、共感しあえる「場」を求めていた。
実態調査に参加した社会学者の新雅史さんは、今回の調査についてこう話す。
「当事者が動いて新たな当事者のデータを集めるという仕組みが画期的。ホームレスの実態を、ホームレスの人が調査することはありえない。当事者だからこそ、これまで可視化されなかった既婚者など、新しいカテゴリーの対象者を発掘できた」
(ノンフィクション作家・中原一歩)
※AERA 2018年3月5日号