“核持ち込み”をめぐる動き[※肩書は当時](AERA 2018年3月5日号より)
“核持ち込み”をめぐる動き[※肩書は当時](AERA 2018年3月5日号より)
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 米国政府は2月2日、今後5年ないし10年間の核戦略の指針となる「核態勢見直し」(Nuclear Posture Review/NPR)を発表した。オバマ前大統領が2009年4月、「核なき世界を目指す」と演説し、同年のノーベル平和賞を得て以来8年、トランプ政権は核政策を一転し「使いやすい」小型(小威力)の核兵器の開発を進め、通常兵器による攻撃に対しても核兵器で報復する「核先制使用」方針を再び明記した。

 弾道ミサイル原子力潜水艦「オハイオ」級14隻が24基ずつ搭載する戦略核ミサイル「トライデントD5」(射程1万2千キロ)の弾頭の一部を威力の小さいものに換え、一般の潜水艦や巡洋艦、駆逐艦が搭載している巡航ミサイル「トマホーク」の一部を核弾頭付きにする。航空機が投下する核爆弾や空対地ミサイルの命中精度を高め、爆発力を小さくするなどして核使用のハードルを低くし、相手に「米軍は核使用をする」と思わせて抑止力を高める方針だ。

 このNPRはロシア、中国の短射程ミサイルの脅威を強調し、その対抗策として小型の核兵器の必要性を述べている。ロシアは推定射程500キロの小型弾道ミサイル「イスカンデルM」(重量3.8トン)をバルト海沿岸の飛び地カリーニングラードに13年から配備。冷戦後、NATO(北大西洋条約機構)に加盟したポーランドやバルト3国はこれを恐れている。だが、イスカンデルMはGPSのロシア版「グロナス」と光学誘導(画像追尾)を使い、誤差は5~7メートルという精密誘導兵器で、弾頭は小爆弾を散布する「クラスター爆弾」や「地中貫通爆弾」などだ。06年に登場以来、「非核」と見られてきたが、最近、「核弾頭搭載可能」との報道も出ている。

 旧ソ連は1982年に「核先制不使用」を宣言したが、ソ連の崩壊で通常戦力が激減したため、93年に「核先制使用もありうる」と表明した。NPRはそれを一つの根拠として「ロシアは核を使おうとしている。米国も小型の核兵器を開発する必要がある」と主張する。だが、米国自身は一度も「核の先制不使用」を宣言していないのだから、他国を非難する理由にはなるまい。「先制不使用」は中国が宣言しており、インドも条件付きながら表明している。

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