経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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私はこうして物書きなどもしているので、色々なご批判をいただくこともございます。そういうものに対しては誠意をもって対応させていただいているのですが、日ごろからよく申し上げているのは、(1)読者や仕事相手の中には、書いていることや話していることをちゃんと理解していない人がかなりいて、誤解したまま反論してくる場合が非常に多い、(2)かなり単純な話でさえ、誤解する人がたくさんいる。この種のことは人工知能(AI)で十分代用できるので、その程度の理解ができない人は、AIとの競争に負けて失業するしかなくなる。格差は拡大、(3)今の教育のやり方はAIが得意なことばかりを教えており、AIとの競争に勝ち残れそうな人はそれほど多くない、という3点です。
私は直感的に自分の経験から申し上げていましたが、これを実証的かつ科学的に取り上げた著作が世に出たのです。国立情報学研究所の新井紀子教授が書いた『AIvs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)です。
新井先生の研究によれば、AIが一番苦手な言語分野でも今はかなりの進歩を遂げており、簡単な主語と述語の関係といった「係り受け」や、二つの文が同じ意味かどうかの「同義文判定」は十分できます。ところが、実際に非常に簡単な文章でデータを集めてみると、なんと高校生の30%が理解していないという結果が出たのです。
大学は読解力を使ってさらに進んで学ぶ場所なので大学で読解力が進歩するとは考えられない。要するに世の中の30%の人は実は文章すら理解できていない。これは今の水準のAIですら、30%の人に取って代われることを意味します。世の中がパンデミックといってパニックになったところで、せいぜい数%の話。それが30%もの人が失業して仕事がなくなる。AIは24時間黙々と働くことを考えると、今の世の中の仕組みは崩壊すると言っていいでしょう。これが今起きてもおかしくない。
しかしながらAIにはどうしても限界がある。それは囲碁や将棋などとは違う、精緻な読解力に尽きる、と先生は指摘しておられ、これも私の直感とほぼ同じであります。どうするんだよ!と焦ったあなたは今すぐ書店へゴー! 先生はちゃんと処方箋も書いておられますから、あとは実行あるのみ!(笑)
※AERA 2018年2月26日号