「なによりお二人の歌は今まで読んだどの恋愛小説よりも感動的でした。たった31文字なのに、こんなに豊かに世界が広がるんだと驚いて、私もやってみたいと思った。指を折って文字数を数えるところから始めました」

 独学で詠み始めると、内に秘めた激情があふれ出した。知花さんの歌を掲載することになった女性誌の編集部からは「本当に出して大丈夫ですか?」と何度も事務所に確認されたという。

 当時の代表歌は「知つているでしよきつく手首を縛つても心まで奪えぬことくらゐ」「ずるいずるい鉛筆書きの未来図はいつか誰かと書き直すのね」など。かなりドキッとする内容なのだ。

「短歌を作るときは赤裸々にならざるを得ない。誰だってめんどくさい自分なんてあんまり見たくないですよね。でも湿度が高い、揺れている生の感情……偽善的な自分や嫉妬する自分、クールすぎる自分、熱すぎる自分、いろんな自分に向き合って、焦点を合わせていくと印象的な歌が詠めたりする。そういうところが面白かったんです」

(ライター・大道絵里子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋

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