左足だけで踏み切る4回転サルコーと、右足で滑りながら左足のつま先をつく、いわば両足踏み切りの4回転トーループなら、痛めた右足首への負担は軽い。
いずれも4年以上前に習得し、いいジャンプを跳ぶこつも熟知しているから、短期間の練習で高い成功率まで戻せるはずだ。
フリースケーティング(FS)では、17年夏の公開練習で口にしていた構成を目指すことになるだろう。それが、4回転サルコーから始まる構成だ。3回転ループについては「4回転ループ」と言っていたのだが、合計点では、3回転ループでも勝てる。
ステップやスピンなどの点と演技構成点は今季ロシア杯のものを使い、前述のジャンプ構成と組み合わせた。ジャンプの出来栄え点(GOE)を昨季後半と今季前半の1年間で羽生が獲得した平均約1.2点で計算すると、207.85点。オータム・クラシックのSPと合わせると、320.57点。世界歴代最高得点でもある羽生の自己ベスト330.43点には及ばないが、世界歴代2位の得点である宇野昌磨(20)の自己ベスト、319.84点を超える。
SP、FSを通じて4回転ジャンプ2種類というのは、羽生自身が一番悔しいだろう。しかし、ジャンプでの転倒、予定より回転数が少なくなる「パンク」さえなければ、羽生は勝てる。勝つための戦略として、習熟度の高い4回転トーループと4回転サルコーだけで五輪に臨むことを考えてもいいはずだ。
試合から長く離れていることを心配する声もあるが、羽生ほど多くの病気やけがを経験、克服してきた選手はいない。
最も記憶に残るのは14年11月、頭部や左太ももなど5カ所を負傷した、中国杯公式練習中の他の選手との衝突だろう。
氷上練習を再開できたのは、次のNHK杯まで約1週間というタイミング。NHK杯は4位だったが、その約2週間後、つまり氷上練習再開から約3週間後のグランプリ(GP)ファイナルでは、4回転のトーループとサルコーをきれいに決めて、日本男子初の2連覇を達成した。