開発の扉を開いたのは、宮崎教授が発案し、AIMの製薬・販売普及を目的に16年に設立したベンチャー企業だ。AIMによるネコ腎不全治療に共鳴、支援する企業関係者らと宮崎教授が共同運営している。
「全世界のネコが潜在的な患者になります。最終的には人への応用を見込んでいます」
宮崎教授は今回開発した製法によって、全世界のネコに投与するのに十分な製剤を確保できる、と見込んでいる。
今後は農林水産省への薬事申請に向け、薬剤の安全性や安定性を確認し、順調に進めば18年10~11月には第1号の治験原薬を完成させる予定だ。その後、半年~1年かけて臨床試験を行い、最短で2年後の商品化が視野に入っている。
AIMタンパク質製剤は、ネコの腎不全治療薬としてだけでなく、前段階である泌尿器疾患全般の予防薬としても効果が期待できる。「2年後に猫の寿命が倍になる」のも、まんざら夢ではない状況だ。
一方、高齢ネコに多くみられる、体内の老廃物を排出できなくなる「慢性腎臓病」の進行を遅らせる抑制剤が17年4月に発売された。動物用医薬品として国内で初めて、「腎機能低下の抑制」の効果・効能が認められた「ラプロス」だ。
「東レ」が製造販売承認を取得し、「共立製薬」が発売元となる。両社は腎臓に直接作用するラプロスの特徴として、「飲ませやすい小さな錠剤」「食欲不振を改善し、体重の減少を抑制する」「活動性の低下を抑制する」といった点を挙げる。
腎不全で失われた腎機能を代替する「人工透析」の大半を占めるのは、機械を使って人工的に血液を浄化し、老廃物を除去する「血液透析」だ。近年は、動物用血液透析装置を導入する動物病院も増えている。国内主要メーカーの「リーフインターナショナル」(本社・東京)は08年以降、農林水産省の承認を得た小動物血液透析装置「NCU-A」を国内で約40台販売。腎臓疾患のネコの延命治療に有効利用されているという。
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2018年2月12日号