図版=AERA 2018年1月29日号より
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 大阪大学の物理学といえば、日本でも有数のレベルを誇る。その入試がこの体たらくとは……。力が衰えてしまったのだろうか。

 予備校で物理を教える吉田弘幸さんは1月6日、大阪大学の突然の発表に驚いた。2017年度入試で物理の出題と採点でミスを犯し、ほぼ1年たって30人の追加合格を出すというのだ。

「センター試験の1週間前に受験生が可哀想だよ。夏に指摘した時点で認めればよかったのに」(吉田さんのツイッター、同日午後5時)

 昨年8月、吉田さんは予備校テキストに載せる問題を選んでいて大阪大の昨年度入試を解き直すうち、疑問を感じた。

 物理で出題された3問のうちの[3]の前半Aの問4、5で、音叉の出す音と、向かい合う壁による反射音が相互作用して強め合ったり弱め合ったりする干渉現象について問うものだ。試験直後の各予備校の評価では「標準」から「やや易」という難度だったが、それぞれの答えに食い違いがあった。問4を正しく解いても次の問5の設定と整合性がなくなってしまうと吉田さんは気づいた。

 8月9日、大阪大理学部宛てに問い合わせのメールを送った。21日に受け取った返答は、吉田さんが「誤答」と判断したものを正解とするというのみ。

 関西ではそれ以前に表沙汰になっていた。6月10日、日本物理教育学会近畿支部が開催した「物理教育を考える会(大学入試問題検討会)」で、大阪大の問題作成責任者が先の「誤答」が「正しい」と説明していた。

 大阪大当局が気づくのは、12月に入ってからだった。4日、物理に詳しい外部の人物が大阪大入試課宛てに、当該問題の「不整合」を詳細に指摘したメールを届けた。問題作成の責任者と副責任者に加え、別の4人の教員が検討し、19日にやっと「その指摘が正当と判明した」という。ミスの原因は「解答を限定するための条件設定をしなかったので複数の解答が可能だったが、それに気づかず特定の答えのみを正答とした」。これが専門家の疑問を噴き出させた。

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