従来のビジネスモデルでは、銀行は生き残っていけない。そう騒がれるが、就職先としては相変わらず人気だ。一体なぜ?
銀行の人気ぶりを示すデータをいくつか紹介しよう。ディスコが運営する就活サイト「キャリタス就活」が2018年卒の学生を対象に行った、就職希望企業のトップ10では、みずほフィナンシャルグループ、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行がトップ5に入っている。
東京大学新聞が毎年7月に出す「就職特集号」からのデータ。こちらは「人気」ではなく、東大の学部を卒業した学生が多く就職した企業のトップ3。直近の16年度は、メガバンクが独占。過去10年分を見てもメガバンクの上位は不動で、実際に就職した学部卒生は累計600人を超えている。
これは東大だけではなく、いわゆる上位校に共通して見られる傾向だ。例えば16年度、早稲田大学の就職先トップはみずほ。2位が三菱東京UFJ、三井住友は6位。慶應義塾大学でも1位はみずほで、三菱東京UFJと三井住友が3位、4位と続いた。
かつて銀行が放っていた輝きはバブル崩壊とともに失われ、ここ数年は低金利政策によって収益が悪化。ドラマ「半沢直樹」でも銀行内のドロドロの派閥争いが描かれたりと、なんだかずっと冴えないイメージなのに、就職先としての銀行がこんなに人気なのはなぜか。どうして、特に上位校の学生の多くが銀行に就職するのか。採用コンサルタントの谷出正直さんの説明はこうだ。
メガバンクは新卒の採用数が1千人規模と他業界に比べて桁外れに多い。認知度も高く、親世代からの「安定・高給」のイメージはやはり健在で、人気ランキングでは上位になる。偏差値の高い大学の学生は、受験で勝ち上がってきた自信とプライドがあるので、人気があると受けたくなる。
かくして採用数のパイが大きい中で、上位校の学生がたくさんメガバンクを受けるとどうなるか。例えば早大の学生が2千人、中堅校の学生が100人受けたとする。仮に内定率が同じ5%だとしても、早大は100人、中堅校は5人。結果、上位校の学生が銀行に殺到しているかのように見えるわけだ。