バーリーマックス(スーパー大麦)/腸の奥まで食物繊維が届く点が特徴。オーストラリアでは大腸がんの死亡率が突出していたことから、腸内環境改善のために同品種の研究を進めた背景がある(写真:帝人提供)
バーリーマックス(スーパー大麦)/腸の奥まで食物繊維が届く点が特徴。オーストラリアでは大腸がんの死亡率が突出していたことから、腸内環境改善のために同品種の研究を進めた背景がある(写真:帝人提供)

 文字通りの“スーパーな大麦”が機能性食品として注目を浴びている。素材メーカー大手の帝人が販売拡大に取り組んでいる「バーリーマックス」だ。

 最大の特徴は豊富な食物繊維にある。一般的な大麦には白米の20倍もの食物繊維が含まれているが、バーリーマックスの食物繊維量はさらにその倍以上。水溶性食物繊維のβ-グルカンやフルクタンに加えて、「第3の食物繊維」などと称されるレジスタントスターチが通常の大麦の4倍も含まれている。

「水溶性・不溶性食物繊維がレジスタントスターチを取り囲む複合構造を有するため、“3段ロケット”の要領で腸の奥まで食物繊維が届くのです」(帝人ヘルスケア新事業部門機能性食品素材事業推進班長・北薗英一氏)

 ヒトの大腸の奥はアルカリ性に偏りやすく、悪玉菌が増殖しやすい環境にあるという。一方で、通常の大麦にも含まれるβ-グルカンなどは、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌の栄養源となり、酪酸などを発生してpH値を下げるが、腸の奥までは届かなかった。バーリーマックスはフルクタン、β-グルカン、レジスタントスターチの順に腸内細菌のエサを提供することで奥まで食物繊維を届けることが可能。通常の大麦以上に、腸内環境の改善に役立つのだ。

●作付け量は前年比4倍

 実は、バーリーマックスは帝人の独自商品ではない。“自前主義”にこだわらず、すでに世にあるヘルスケア分野の優れた素材を生かすべく、帝人は2013年に「提携推進部」を設置。学術誌「ネイチャー」や「サイエンス」の誌面の10%以上を「腸内フローラ(腸内細菌叢)」に関する論文が占めることを知り、機能性食品素材の発掘に奔走し始める。そのなかで、バーリーマックスを開発したオーストラリア連邦科学産業研究機構の存在を知ったという。

「優れた素材なのは間違いなかったが、社内には批判的な声も少なくなかった」(同)

 帝人は15年に独占共同開発契約を締結。翌年7月には実験的に「スーパー大麦グラノーラ」を独自商品として販売した。

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