文化人類学者レヴィ=ストロースは、「人間は常に二項対立を使って思考する」と言っています。つまり、ぼくたちがものごとを考えるときには、対義語のような対立する概念を軸にしているというんですね。

 対義語は、意味の全体が正反対になっているように見えるのですが、じつは意味のほとんどは同じで、ある部分だけが反対になっています。反対の意味ではなく、同じ意味のある部分が反対なんです。だから軸にできる。 
 たとえば、「太い」「細い」という対義語は、両方とも線の幅や棒状のものの断面積について表す言葉です。「進化」「退化」「停滞」も生物の環境による変化について、「平和」「戦争」「貧困」「差別」も世の中の状態について考えるための軸だといえます。

 ここで大事なのは、軸の両端はなだらかにつながっているということです。ものごとにはたいてい<あいだ>があります。戦争でなければ平和だということではありません。どのような前提と条件のときに、どんな軸で考えると、どのような状態か、というふうに分析することで、理解したり、記述したり、誰かに伝えやすくなったりするわけです。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、実践教育ジャーナリスト、多摩大学大学院客員教授。大手予備校などで中学受験の講師として20年勤めた後、2014年「探究×受験」を実践する統合型学習塾「知窓学舎」を創設。実際に中学・高校や大学院で行っている「リベラルアーツ」の授業をベースにした『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)を3月20日に発売

(構成 教育エディター 江口祐子/生活・文化編集部)

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