

“監視社会”は急速に膨張している。その象徴が、至るところに設置されている「防犯カメラ」だ。街角、駅、店舗、オフィス、マンション……。今や、全国で300万台以上もの防犯カメラが稼働しているといわれており、あらゆる場所でカメラの「目」が光っている。
かつては店舗内がもっぱらだった防犯カメラは犯罪の増加とともに増え続けた。警察が日本最大級の繁華街、東京・歌舞伎町で50 台の監視カメラシステムの導入に踏み切ったのは15年前の2002年。国内で犯罪認知件数が約285万件とピークになった年だ。当時、防犯カメラの設置はプライバシーの侵害に当たり監視社会になると、弁護士や学者らが反対の声をあげ、町も揺れた。だが設置によって、2249件(03年)あった歌舞伎町の刑法犯認知件数は04年に2042件、05年には1513件にまで減少。これが呼び水となり、凶悪事件が起きるたびに各地で防犯カメラの設置は加速した。
歌舞伎町商店街振興組合の男性も効果を感じている。
「カメラが安心感を与えたのは間違いない。監視カメラ設置前は、週末の日中の歌舞伎町には人がいなかったが、今では子ども連れも増えている」
市場調査会社の富士経済によれば、国内の防犯カメラの新規設置数は、11年に77万台、17年には99 万台で、来年以降は年100万台超を予測。市場規模も右肩上がりで、11年は333億円だったのが、高機能化もあって、今では433億円(17年、見込み)だ。
いまや防犯カメラの設置に異議を唱える人は少ない。しかし、高度に進化していく技術の先には、“超監視社会”の危うさもはらむ。
11月28日、オリエンタルランドは東京ディズニーランド(千葉県浦安市)で顔認証システムを導入すると発表した。「よりスムーズにご入園頂くため」(同社広報部)とし、総額約120億円かけ、20年度の完成を予定している。
ここ数年で急速に普及してきたのがこの「顔認証」技術だ。撮影された人の顔をデータベース化し判別する技術で、01年に米国で起きた「9.11 テロ」を機に欧米で実用化が始まった。ほどなく日本でも導入が進み、今ではスマホのロック解除やパソコンにログインする際の本人確認、コンサートの入場チェックに会員制飲食店の入店時など、用途も拡大の一途だ。(編集部・野村昌二)
※AERA 2017年12月11日号より抜粋