ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

【写真】韓国に出発するトランプ米大統領とメラニア夫人

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 先週お伝えした通り、トランプ大統領のアジア歴訪期間中にアメリカ政治の一つのターニングポイントになり得るバージニア州知事選挙が行われました。バージニア州は、トランプ氏が昨年の大統領選で、有力だった南部で唯一失った州です。失ったとはいえかなりの接戦を演じたわけですが、今回の州知事選挙では、民主党のノーサム氏が得票率で9ポイントもの大差をつけて圧勝。共和党のギレスピー氏のスキャンダル報道に助けられたのは事実ですが、大差の意味するところは大きい。

 昨年の大統領選でトランプ氏が取った票数は2012年の大統領選で共和党候補が取った票数から大きくは増えていません。一方、ヒラリー氏はオバマ前大統領が取った票数を減らして負けたという、いわば民主党員が民主党は支持するがヒラリーは嫌だ、という妙な「ねじれ」があったわけです。トランプ氏が圧倒的な支持を伸ばしたわけではなかったのです。今回のバージニア州知事選挙は、その「眠っていた」民主党支持層がどういう行動をとったのか、ということを見る上で非常に重要な意味を持っていたわけです。

 中身を見てみると、政治的に敏感な人々が多く住んでいるワシントンDCに隣接するアーリントン、アレクサンドリアといった地域で民主党が獲得票を大きく伸ばしています。さらに特筆すベきは独身女性に限ってみると、77%対22%でノーサム氏が支持されたという結果です(出口調査)。昨年の大統領選では女性初の大統領を期待して、独身女性たちはヒラリー氏を支持すると予想していたのですが、実はヒラリー氏を支持しておらず、もちろんトランプ氏なんて大嫌いで、結局投票に行かず、「家で寝ていた」ため、ヒラリー氏は負けてしまったということが改めて証明されたと言っていいでしょう。このままトランプ大統領にいいようにされて、まして2期連続でもされたらえらいことだ、と悟った独身女性票が動いたというのが、今後を占う上で非常に重要だと思われます。

 来年の中間選挙では共和党は決して楽観できません。トランプ支持でまとまっていいものかどうか、候補者は迷わざるを得ません。民主党も、今勢いのあるいわゆるリベラル派は別の候補者を推薦していたという背景もあり、決して一枚岩とも言えません。アメリカ政治の行方に要注目です。

AERA 2017年11月27日号

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