※写真はイメージです
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 LINEなどのインスタントメッセージを頻繁に使っている子どもたちの学力が低いという調査結果がある。頻繁なメッセージのやり取りで集中力が低下するというのがその理由の一つ。その驚くべき影響について、「脳トレ」の川島隆太教授が長く所長を務めてきた東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平氏が解説する。(朝日新書『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋)

【図】インスタントメッセージを使う時間が長いほどテスト成績は下落していく

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■インスタントメッセージと学力の関係

 インスタントメッセージの使用と子どもたちの学力には、どのような関係があるでしょうか?

 仙台市の調査の中で、「携帯電話・スマホなどでメールやメッセージのやりとりをするとき、どれくらいの時間で返事をしなければいけないと思っていますか」という質問をしています。2017年度の結果を見ると、「すぐに返す」と回答した子どもたちが29.4%、「30分以内」が22.0%、「1時間以内」が7.9%、「その日の内に」が27.9%、「翌日以降でもかまわない」が12.8%でした。

 私の個人的な感覚では、「1時間以内」でも返信が早いなと思ってしまいます。仮に1日1時間勉強する子どもがいたとして、勉強中に友人からメッセージが届いたとしたら、約6割の子どもは勉強を中断し、スマホを手に取り返信をしているという計算になります。[図]は、スマホを持っている子どもたちについて、LINE等のインスタントメッセージの使用時間と学力の関係を調べた結果を表しています。縦軸に「テストの成績」、横軸に「インスタントメッセージの使用時間」をとっています。インスタントメッセージの使用時間が長い子どもたちほど、明らかに学力が低くなっている様子が見てとれます。この結果から、インスタントメッセージは使えば使うほど学力に悪影響があるといえます。

 インスタントメッセージを使用する子どもたちは、どうして学力が低いのでしょうか?

 まずはインスタントメッセージの特徴について考えてみましょう。最初に挙げられる特徴は文章の長さです。インスタントメッセージでのやりとりは、従来のメールと比べて短い文章で行なわれます。加えて、LINEの場合はスタンプと呼ばれるイラストによってやりとりもできます。このように、短文とスタンプを中心としたやりとりになるため、従来のメールよりも会話のラリーの数が多くなります。つまり、それだけスマホに通知が届く回数が多くなるわけです。

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「既読無視」「未読無視」がもたらす焦り