グループLINEは、個人LINEよりもめやすいのか。駒澤大3年の女子(21)は、グループLINEの関係性は曖昧で、発言が難しいと語る。
「初めて会った人もいるグループだと、数人の個性を知っていても、全体の空気がどう動くのかわからない。一方的に発信したら、『なんだコイツ』と思われるかもしれませんよね」
だから、場の空気を読んで、無難な会話を進めていく。そんな折も、文字だけではイメージが伝わらないのではと思う折も、スタンプは有効だ。
京都大3年の男子(20)は、文字だけだと冷たく聞こえがちだから、「イメージを伝えるため、絵文字やスタンプを添えるようにしている」と言うし、あまり絵文字やスタンプを使わないという上智大3年の女子(21)は、友人から「怒ってる?」と尋ねられることがあるため、「なるべく使うように心がけている」。
だが、首都大学東京教授で社会学者の宮台真司さんは、こうした傾向に懐疑的だ。
「空気を読み合って主体を失い、コミュニケーションが空洞化する。スタンプのやりとりに背景を共有してシンクロする楽しさがあるのはわかるが、あれはコミュニケーションでなく、自動機械です」(宮台さん)
若者の「主体性のなさ」や「ガッツのなさ」を指摘する声は、複数の熟年世代から聞かれた。
しかし、当の若者たちは、SNS上のコミュニケーションとリアルのそれとの間に、明らかな差を見いだしている。後者こそ価値があると、多くは肌身で知っているのだ。
前出の亜細亜大の男子は、LINEを「言葉をサボれる時短ツール」だと感じている。怒りや不快感を抱いても、適当なスタンプを使えば、真逆を取り繕うことができる。それが、「気持ち悪い」。「LINEよりは、実際に会って五感でコミュニケーションを取るほうが好き」だ。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2017年10月30日号より抜粋