竹内智香(たけうち・ともか)/1983年12月生まれ。スノーボードアルペン種目選手。ソルトレーク、トリノ、バンクーバーと冬季五輪に続けて出場し、2012年12月にはワールドカップで初優勝。ソチ五輪では日本人女性スノーボード選手で初のメダルとなる銀メダルを獲得。5度目の五輪となる平昌では自身の集大成として金メダルを目指す竹内智香(たけうち・ともか)/1983年12月生まれ。スノーボードアルペン種目選手。ソルトレーク、トリノ、バンクーバーと冬季五輪に続けて出場し、2012年12月にはワールドカップで初優勝。ソチ五輪では日本人女性スノーボード選手で初のメダルとなる銀メダルを獲得。5度目の五輪となる平昌では自身の集大成として金メダルを目指す
竹内は2つのモチベーションを持って競技を楽しんでいるという(写真:本人提供)竹内は2つのモチベーションを持って競技を楽しんでいるという(写真:本人提供)
 ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。

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 先週は私が選手でありながら自らスノーボード製作も行っている話をしましたね。今回はより熱く、その思いを語ります。現在、新潟県にある工場で私たちのブランド「ブラックパール」を作っていただいていますが、私も競技や練習の合間を縫ってたまに工場に行っています。そこでは十数人の職人さんが働いていて、あらためて感謝の念を覚えます。

 正直、メダリストはありがたいことにいろいろな物品を提供してもらえる立場でもあると思います。もちろん、それは競技者として積み重ねてきた結果が認められているからこそでもあるんですけど、ただこうして自ら製作に関わると、どれだけの人や物が関わって一つの製品が完成するのかがわかります。

 自分が納得のいく板を作れることはもちろんですけど、現役の間にメーカー側の立場に立てることも貴重な経験です。最初にスイスの小さな工場で始めた時は、1日に多くても4、5本ぐらいしか作れなかった。一つの材料を仕入れるには、トン単位で買わないといけない。あらためて、今でも作る作業がどれだけ大変か肌身で理解できます。

 
 実際の競技面への影響ですが、長年の経験もあって、冷静に見てもたぶん、自分の技術はある程度高いレベルまで来ています。だからこそ、あとは道具に引き伸ばされる部分も絶対にある。テクニックに加えて、フィジカルもマテリアル(道具)も、全ての部分で極みに近づきたい。実感としても、最近は道具によって自分の能力が伸びている部分が間違いなくありますから。

 そして、自分のブランドを他の海外選手も使っていて、その選手が表彰台に上がることもあります。その瞬間は、本当にうれしい。たとえ自分が表彰台に上がれないレースでも、ブラックパールを使って滑っている他の選手が勝ち上がっていく姿を見ると、結果にへこんでいる暇もないし、早くホテルに帰ろうとも思わない。最後までその選手の勝利を見届けたいという気持ちになります。

 自分が負けても、もう一つ大きなモチベーションがあるということで、すごく競技を楽しめていますよね。私を応援してくれている人やスポンサーの皆さんも、きっとこういう感情で見てくれているんだなと思うと、板作りは私に競技者だけでなく人として、社会人として学ばせてくれることが多いなと感じています。(構成・西川結城)

AERA 2017年10月23日号