2015年に羽生結弦(はにゅうゆづる、22)が300点時代の扉を開けてから、男子フィギュアは新たなフェーズに突入した。トップを走る羽生を、伸び盛りの宇野、4回転が武器のチェンと金、ベテランのフェルナンデスとチャンが追う。
男子シングルの熾烈なトップ争いに絡むには、4回転ジャンプの数と質で得点を積み増すことが重要だ。
そのうえで、演技やスケーティングで個性をプラスできた者が勝者になる。今季は五輪の前哨戦となるGPシリーズから、歴史に刻まれるハイレベルな戦いになることが予想される。
実力は、ソチ五輪王者の羽生結弦が一歩リード。オールマイティータイプで、4回転3種類を最高の質で跳ぶことができ、スピンやステップもプラスをもらえる。プログラム全体をまとめあげる力が高く、一つのジャンプミス程度ならば、演技全体の流れを止めずに滑りきる力もある。
五輪シーズンのプログラムには、ショートプログラム(SP)、フリースケーティング(FS)ともに2季前に世界最高得点330.43をマークした時と同じものを選んだ。SPでは4回転の種類で難度を上げ、FSは4回転を3本から4本、場合によって5本に増やす。五輪連覇を目指す王者にふさわしい、貫禄ある戦略だ。
王者に肉薄するのは宇野昌磨(19)。今季初戦のロンバルディア杯では4回転をSPで2本、FSで5本入れ、総合319.84。まさに伸び盛りで試合ごとに新たなジャンプを加え、個性的な表現も追加している。練習では4回転ルッツも成功させており、フリップ、ループ、サルコウ、トウループと合わせ4回転5種類「制覇」もあり得る。
外国勢も手ごわい。
米国のネイサン・チェン(18)は5種類の4回転を成功させており、調子に合わせて本番のジャンプ構成をアレンジできる強みがある。昨季四大陸選手権ではSPとFSで計7本の4回転を跳び、307.46で優勝。一度とはいえ羽生に勝った経験が自信になり、アグレッシブに4回転を跳んでくるだろう。