80年代後半に一世を風靡したジャニーズアイドルの光GENJIの勢いが一段落してから、彼らの後輩として出てきたSMAPは、デビュー当初は期待されるほどの結果を残せず、人気は低迷していた。

そこで、事務所側が思い切った方針転換をして、SMAPをバラエティ路線で売り出していくことにした。それまでにもアイドルがバラエティ番組に出ることはあったが、SMAPほどそこに真剣に向き合った者はいなかった。アイドルであるということを言い訳にせずに、スタジオコントなどの本格的なバラエティ企画に挑んだ。

バラエティ路線のアイドルとして新時代を切り拓いた彼らの代表作と言えるのが、1996年に始まった『SMAP×SMAP』(フジテレビ)である。コントあり、歌あり、料理コーナーあり、という王道のバラエティ番組として人気を博し、視聴率30%を超えることもあった。

一方、この時期には「コント番組では数字が取れない」と言われるようになり、芸人たちがテレビでコントを見せる機会が激減していた。

『SMAP×SMAP』は「コント冬の時代」に生き残った唯一のコント番組となっていたのだ。「アイドル化する芸人」に対抗して「芸人化するアイドル」を作るという壮大なプロジェクトは、ここに一つの完成を見ることになる。

『SMAP×SMAP』が始まった翌年の1997年には『ダウンタウンのごっつええ感じ』が終了した。このような時代背景を踏まえると、当時の松本がSMAPを脅威に感じていたというのは、誇張でも何でもないというのがわかるだろう。「コント」という芸人の聖域にアイドルが足を踏み入れ、そこで文句なしの結果を残したという事実は、お笑い界を揺さぶる一大事だったのだ。

その後、アイドルがバラエティ番組に出るのは当たり前のことになり、中居をはじめとして司会者として活躍する人もどんどん増えている。それに比べると、芸人をアイドル視する風潮はやや下火になっている。芸人界とアイドル界は互いに影響を及ぼし合いながらも、今は棲み分けがはっきりしてきて、覇権争いは一段落した感がある。

松本と中居は2000年放送のドラマ『伝説の教師』(日本テレビ)で共演して以来、プライベートでも親交を深めていった。同じ時代を生きた2人の間に漂う独特の親近感と緊張感が、『まつもtoなかい』という番組を今後も刺激的なものにしてくれるはずだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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