●会話力と場作りのコツ
たとえば、祇園の人たちの「会話力」や「場作り」。舞妓や芸妓はお座敷に入った瞬間の様子で、その日の集まりの趣旨、誰をもてなしたいのかを察知して、その場に応じたふるまいをする。
「言葉で説明がなくても、なんとなくわかるようになります」と、茉利佳さん。「場の雰囲気をどう見極めるか」、そして「その子ならではのキャラクターがあるか」が、人気の出るポイントなのだ。
「入門すると、とにかく毎日お稽古です。稽古のときには型を叩き込まれますが、型が身につくと、自然にその人らしさがあらわれてくる。個性は無理につくるものではないんです」
と、究香さん。最初についているのは個性ではなく「癖」とみなされ、それを取るのが稽古でもあるのだ。
着付け講師の鈴木佳子さん(48)は、「舞妓さんに憧れていたので、会ってみたかった。豪奢な着物も含めて魅力的です」。
この日の参加者は100人あまり。30代の男性を中心に、女性も3割ほど交じっていた。
会場で感想を聞いてみると、「現代のビジネスでも使えるような、共通する要素があった」という声が多かった。
実は祇園でも、客層の高齢化が進んでおり、懸念する声がある。ビジネスパーソンが仲間で集まって、祇園で遊びながら、日本の伝統文化を学ぶ──新しい波が生まれつつあるようだ。
(ライター・矢内裕子)
※AERA 2017年9月11日号