「勉強したほうがいいのは安倍首相。自分の仕事の権限も理解していない人間に、憲法改正などできない」(適菜さん)
●権力縛るのが立憲主義
13年3月29日には、民主党(当時)の小西洋之参院議員が「芦部信喜さんという憲法学者、ご存じですか」と問い、「私は存じ上げておりません」と安倍首相が答えたことが話題に。
「首相の母校である成蹊大学法学部政治学科の学生をもバカにする発言。芦部は憲法学の第一人者・宮沢俊義の弟子で、有名な憲法学者。あまりに無知が過ぎ、憲法の考え方もおかしい」(同)
例としてこんな答弁を挙げた。
「憲法が国家権力を縛るものだという考え方はありますが、王権が絶対権力を持っていた時代の考え方であって、今まさに憲法というのは、日本という国の形、そして理想と未来を語るものではないか」(14年2月3日)
適菜さんは「権力を縛るという立憲主義は保守思想の根幹ですよ」と話し、言葉を継いだ。
「憲法についてまじめに考えているとは思えない。祖父・岸信介元首相宿願の憲法改正をし、歴史に名を残したいだけでしょう」
都議選の自民惨敗後、仙台市長選でも自公系候補が敗れた。8月の内閣改造を前に、稲田朋美防衛相が辞任するなど政権与党にほころびが目立ってきた。
「確かに安倍首相に政治家としての資質はないが、揶揄することで留飲を下げていても仕方がない。問題は安倍一強を生んだわれわれの社会だ」
適菜さんは今、ドイツの哲学者ニーチェのこんな言葉をかみしめる必要があると話す。
「人は、治療手段を選んだと信じつつ、憔悴(しょうすい)を早めるものを選ぶ」
所属議員の不祥事が絶えない自民党のみならず、民進党も蓮舫代表が辞意を表明し、政治の信頼回復が急務だ。改革や規制緩和といった聞こえがいい言葉の果てに何があったのか。いま一度、立ち止まって考えるべきだろう。
(編集部・澤田晃宏)
※AERA 2017年8月7日