7月11日に施行される「共謀罪」法。一般市民を巻き込むか否かは、運用する警察にゆだねられている。「共謀罪は使えない法律」との指摘もあるが、だからといって安心していいのだろうか。
「今回成立した共謀罪の形には、賛成できません」
そう語るのは、早稲田大学大学院法務研究科の古谷修一教授。早くから、日本国内での共謀罪導入を唱えてきた人物でもある。
2000年に国連で採択され、03年に国会承認された国際組織犯罪防止条約(TOC条約)。この5条には、締約国が重大犯罪の合意、もしくは組織的犯罪集団に参加することのどちらか(もしくは両方)を犯罪にすることを義務付けている。前者の条件を満たすために必要なのが共謀罪、というのが古谷教授を始めとする共謀罪賛成派の大きな理由になっている。
「特に日本はアジア諸国の人々が対象の人身売買が地下で横行しており、組織犯罪に関しては加害者。条約を結び、共謀罪を使ってこういった組織を潰す必要性は極めて高いです」(古谷教授)
●277もの犯罪に適用 解釈により広範囲にも
それでも今回成立した「共謀罪」法に賛成できない理由は、共謀罪が適用される犯罪の数が277とあまりに多いことだ。条約5条には、犯罪の種類について「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的の(犯罪)」と規定している。
もともとTOC条約はマフィアなどの犯罪組織に対する資金源を断つことを目的にした条約と語る古谷教授は、「極端な話、殺人罪だって経済的な犯罪ではないのだから対象から外してもいいくらい。日本で言えば暴力団がどう利益を得ているかから考えて、犯罪の数を絞るべきだった」と主張する。
なぜ277もの犯罪が決められたのか。古谷教授は共謀罪を運用する側の心の内をこう推察する。
「これをどう運用するかはわかりませんが、利用できるようにしておきたい、と考えるのではないでしょうか」
強行採決の末に成立した「共謀罪」法は、7月11日に施行される。共謀罪は、(1)「組織的犯罪集団」の活動として、(2)277種類の犯罪の遂行を2人以上で計画した者のうち誰かが、(3)準備行為を行った時、に処罰するというものだ。解釈によって広範囲にも厳格にも適用されうることから反対派と賛成派の意見は真っ向から対立している。