ロシア外務省は「偽ニュース疑惑」に反論するページを開設。仏大統領選でロシアのサイバー攻撃を指摘する記事に「FAKE」のマークを入れた (c)朝日新聞社
ロシア外務省は「偽ニュース疑惑」に反論するページを開設。仏大統領選でロシアのサイバー攻撃を指摘する記事に「FAKE」のマークを入れた (c)朝日新聞社

「情報の受け手側にも偽ニュースを判断するためにできることはある」

 そう話す須藤龍也・朝日新聞編集委員(サイバーセキュリティー担当)は、16年4月の地震の際、「地震のせいでライオン放たれたんだが 熊本」というツイッター情報を把握した朝日新聞社内で、その事実確認作業にあたった一人だ。添付されていたオスのライオンが夜の街を歩く写真を、グーグル画像検索に落としてチェックした。すると、実際には南アフリカで投稿されたライオンの写真が流用されており、熊本地震とは無関係の偽ニュースであることが分かった。

「偽ニュースの発信元は通常、お金がかかるようなことはせず、すでに存在する画像を流用することが多い。グーグル検索は、過去の記事だけではなく、類似画像の検索もできるので、これを活用することで、偽ニュースかどうかを見極めるヒントが得られる」

 須藤氏によると、ウェブサイトのIPアドレスを調べて、その登録者情報を確認するなど、より高度な対処方法もある。だが、誰でもスマホで気軽に操作できるグーグル検索は、ネットに詳しくない人にも使い勝手がよく、「一番簡単で手っ取り早い方法だ」。さらに「グーグルニュース検索」という機能を使うと、グーグルが実績のあるニュースサイトと認めた媒体の記事しか出ない。そのため、内容に疑義のあるニュースの見出しなどを検索にかけてみて、同じような内容の記事が他にも出てくるかの比較チェックもできる。

 ロシアの関与が疑われているような手の込んだ偽ニュースを見抜くのは難しいが、一般的に流されるような偽ニュースであれば、「大半はグーグル検索の活用で見極めることができる」と須藤氏。そのうえで、「最も重要なのは、情報が集積した究極の空間であるインターネットにおいて、情報を見分け、ふるいにかける能力を養うためのインターネットリテラシー教育を強化することだ」と強調する。

 日本ではスマホなど情報端末の普及が先行しており、インターネット教育の先進国である米国などと比べると、ネットの脅威に対する認識が弱い人が多いと指摘する専門家も少なくない。

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