ガラス張りの明るい外観に、ウッディな内装。従来の鮮魚店のイメージを覆す「ニューウェーブ魚屋」が人気を呼んでいる。スタイリッシュな魚屋、全国の朝どれが並ぶ超鮮魚店、レアな魚が集結するワンダーランドから、ユニークな現代版行商まで。魚がおいしく、楽しくなっている!
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「オシャレなお店で買い物すると気分が上がりますよね。子育て中はなおさら」
東京の中目黒で暮らす稲村裕子さん(38)は2児の母。自宅近くに週3ペースで通うお気に入りの店がある。魚屋「サカナバッカ」だ。ブルーと白を基調にした外観はまるでカフェのよう。新鮮な丸魚が並ぶ店内の光景には息子の勘太君(4)も心を躍らす。
「赤い金目鯛を目にしたときには、『すごーい』って声をあげていました。アサリが水をピューッと吐き出すのを見たときも興味をもって。『これ、買って』って。興味をもったものが食卓に並ぶと子どもは喜んで食べるし、料理する私も嬉しくなります」(裕子さん)
●未利用魚も並ぶ
都内に4カ所あるサカナバッカを運営するのは、ITベンチャーのフーディソンだ。飲食店向けの鮮魚注文ウェブサービス「魚ポチ」を展開している。漁獲量が少なかったり、大きさがふぞろいなため従来の流通にのらなかった「未利用魚」など、珍しい魚も扱う。取材した日は、青森産のゲンゲがあった。水深200メートル以深にすむ深海魚だ。
「めったに入ってこない魚です。コラーゲンたっぷりで、煮付けにするとおいしいですよ」
店長の岡部拓也さん(27)はそうすすめる。平日の午前中、店を訪ねると次々と客がやってきた。
「これは買うよね~」
そんな第一声を発したのは代々木公園のワインバー「アヒルストア」オーナーの齊藤輝彦さん(40)だ。目をつけたのは、この日の目玉商品の千葉・館山の黒鯛。1匹880円。
「産直のこういういいものが安く出るので、ほぼ毎日のぞく」
という。会社を経営する30代の女性は、週末のイタリアンやフレンチを料理するのに店を利用する。
「カルパッチョとか、よく作ります」(女性)
1歳半の常連、土師正大君が手にしたのは好物のしらす。
「このへんはスーパーしかなかったので、魚屋さんができてみんな喜んでいます。わからないことがあっても、店員さんが親切に教えてくれる」
と母の真衣子さん(32)。魚の下処理や三枚下ろしも無料でするため、丸魚の扱いに慣れていなくても大丈夫だ。クッキングスクールなどのイベントにも力を入れており、中目黒店が毎月行うマグロの解体ショーは常連の楽しみになっている。
「魚の色々な食べ方を提案し、楽しんでいただけたらと思っています」(岡部さん)