●繁殖握る雄の「気配り」

 かつては「パンダといえば上野動物園、上野動物園といえばパンダ」と言われたが、近年のアドベンチャーワールドの繁殖実績は著しい。上野の5頭に対し、17頭。多くは中国に帰って立派なお父さん、お母さんになっている。秘密はどこにあるのか。企画営業課の井上杏菜さんは「14頭の父親になった永明(エイメイ)の力が大きい」と話す。永明は1992年、中国で生まれ、94年に来日した。優しく穏やかな性格で、雌の体調や気分の変化に気づく「気配り」ができる。永明自身双子だったためか、最初のパートナーとの間には2組の双子を含む6頭が、2頭目との間にも3組の双子を含む8頭が生まれている。

「リード力」の点では上野動物園のリーリーも負けていない。受け入れてもらえるよう、雌を観察し、発情のタイミングを我慢強く待つ姿が見られるという。

 加えて、「リーリーとシンシンの相性はばっちり」と福田園長。2頭は前回に続き、今回も人工授精に頼らず出産にこぎつけた。「世界の動物園では自然交配できないことがほとんどで、人工授精で生まれているケースが多い。自然交配できるペアが日本に2組もいるというのは素晴らしいこと」と話す。

 待望の赤ちゃん誕生に地元はお祝いムードが続く。上野観光連盟の二木忠男会長は「パンダは上野の看板役者。やっと生まれてくれた」とほくほく顔だ。

 同園によると、赤ちゃんは生後1週間ごろから黒い部分が見え始め、1カ月ごろにはパンダらしい模様が完成する。公開の予定は未定だが、29年前にユウユウが生まれた時は3カ月後に名前を公募し、その姿は半年後に公開された。

(朝日新聞社会部・西村奈緒美)

AERA 2017年6月26日

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