一方で、みんなもっと性的マイノリティーを理解しよう、という風潮にも浅はかさを感じることがあります。世の中が変に距離感を失っていて、人の心をおもんぱかることができなくなっているのかな、と思います。私はテレビでは意識的に「オカマ」という言葉を使っています。この言葉はいま自主規制の対象になっていて、この呼び方を強烈に嫌う当事者も多い。私自身も人から「オカマだ!」と言われるとムカッときますが、自分の存在を「差別語」扱いされるほうがよっぽど嫌ですし、LGBTなんて頭文字を並べた言葉で呼ばれることにも違和感があります。

 セクシュアリティーは生理的な感覚につながる部分もあるので、いろいろなセクシュアリティーに関して「気持ち悪い」と思う感覚は強制的に消せるものではない。それを隠して善人面されるより、もっと普通にぶつけられるほうが自然だと思うし、逆風の中にいる誇りというものも持ち続けていたいと思っています。(談)

(構成/編集部・福井洋平)

AERA 2017年6月12日号

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