アルゼンチン代表でFCバルセロナに所属するサッカー界のスーパースターのリオネル・メッシと小柄で左利きという共通点があることから、「日本のメッシ」「リトル・メッシ」と国内外で称賛される久保。普通であれば傲(おご)りや慢心が出てもおかしくないが、若くして海外に渡ったことで人としても大きく成長しているのは、メディアに発信する言葉からもうかがえる。

「まだ大した活躍もしていないのに過度に注目されるのは歯がゆい。しっかり自分が活躍して注目してもらえるような選手になりたい」

 久保の人間性についてはU-20W杯を現地取材した記者からもこんな声が聞こえてくる。

「チームには四つも五つも年上の選手がいたが、試合中には臆することなく自分の要求を伝えているのが印象的だった。また取材エリアでの記者との受け答えを見ても、一番しっかりしているのが久保だった」

 とはいえ、まだこれからの選手であることに変わりない。敗れたベネズエラ戦では延長を含め約70分間プレーしたが、決定的な仕事が期待されたなか、フィジカルで勝る相手に思うように仕事をさせてもらえずに沈黙。結局、グループリーグを含め、初の世界大会は3試合に途中出場したが無得点に終わった。

 帰国後は悔しそうに、一部メディアに語ったという。

「悔いが残らないと言えば嘘になるが、何も得られなかったわけではない。まだ選手人生のスタートに過ぎないので、この経験を生かしていきたい」

 18歳になる19年にはFCバルセロナへの復帰が内定しているとも言われるだけに、将来への期待は高まる。だが、久保はまだ6月4日に16歳になったばかり。過去に天才少年ともてはやされ、その後姿を消した選手も少なくないだけに、過度の期待は禁物である。(スポーツジャーナリスト・栗原正夫)

AERA 2017年6月12日号

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