生きる喜びは、他人の感動とは関係ありません。このお菓子めちゃくちゃうまい! とか、蟻を眺めて1時間とか、そういうことの中に輝いているものです。大人だってそうですよね。命の尊さは、今この瞬間にあります。
親の出産武勇伝を聞かせて感謝の言葉を述べさせるよりも、10歳の子供が今何を感じているかを知るほうがうんと大事。彼らが笑ったり悩んだりして生きている姿を見れば、イベントなんてなくても感動します。
先日、12歳の次男が「おじさんになりたくないなあ」と言うので「大人になるって自由になるってことでもあるよ」と言ったら「僕、自由だよ」と答えました。彼はアイスかなんか食べていましたが、私はおおお~と密かに胸震わせてその顔を眺めていました。
奇跡はそんな時に起きます。地味で、身近な瞬間に。親子愛を人前でイベント化しないと感動しないのなら、それは何に感動しているのでしょうか。子供は大人たちの泣けるネタではないのです。
※AERA 2017年6月5日号