●本来の寿命は41.5歳

 最後に『ゾウの時間ネズミの時間』の著者で生物学者の本川達雄さんに、生物学の観点から「老人の時間」について聞いた。

 動物の心臓は、血液が体を巡ってまた心臓に戻るまでに80回打つ。ゾウもネズミもヒトも同じ。そして心臓が15億回打てば、みな死を迎えるという。

「ヒトの場合は41.5歳にあたります。生物として本来の寿命はそのあたりだということでしょう。生殖活動が終われば、生物としての価値もない。あくまで生物学的に言えば、ですが」

 41歳はさすがに早いにしても、65歳以降は「おまけの人生」のようなものではないかと本川さんは言う。そしておまけの人生では、若い時とは違う新しい時間、新しい人生をデザインすべきだ、と。

「おまけの部分は、『広い意味での生殖活動』にあてるのがよいと思っています」

 それはつまり、次の世代を育てるという意味だ。生物の本質とは「続く」こと。個体は死んでも、生命自体は40億年存続してきた。次世代のために働けば、社会も人類もずっと存続していく。

 本川さん自身、定年退職した今、小学校の出前授業のボランティアに出かける日々という。

(編集部・高橋有紀)

AERA 2017年5月15日号

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