血糖値が急上昇しない食べ方も大切だ。野菜を先に、ゆっくり、腹八分目に食べること。清涼飲料水などに含まれる甘味料の「果糖」は避けた方がいい。ブドウ糖に比べてAGEを作るスピードがなんと10倍だという。
次に心の変化はどうか。長生きしても楽しいことは何もない? そう悲観するのもまだ早い。
70代ぐらいまでは病気や老いの不安感で落ち込みがちでも、80歳以上になると幸せ感が高まるという仮説があるのだ。
●超越的な考え方になる
1989年にスウェーデンのラルス・トルンスタム教授が提唱した「老年的超越」と呼ばれる概念で、高齢になると物質主義的な考えから、宇宙的、超越的な考えに移る。金銭欲などの個人本位の興味でなく、大宇宙の中にいるので孤独ではない、先祖代々つながっているという価値観に変わるとする仮説だ。
「実際に、高い幸せ感を持っている人が多い印象があります」
そう話すのは、百寿者(100歳以上の人)調査の第一人者で慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの広瀬信義特別招聘教授だ。広瀬教授は20年以上、800人超の百寿者を調査。遺伝子や認知機能、性格、幸せ感を包括的に調べてきた。
百寿者の方々に「今、幸せですか?」と聞くと「幸せだ」と答える人がとても多いという。ほんの一例だが、
「子どもには子どもの、年寄りには年寄りの楽しさがある」
「私は自分の夢を実現させてきたから幸せ」
などが回答だ。現実をいい意味での諦めとともに受け入れ、満足している。そして「ひ孫の成長を見たい」など、希望を持ち続けている人も多いという。
一方で幸せ感の高さは、身体機能が高いとか、家族と一緒に暮らしているといった環境とは必ずしも相関しないともいう。
「今の考えが長く続くとは限らない。年をとると考え方が変わるのだと思います」(広瀬教授)
80歳を過ぎてから初めて味わえる独特の境地、充実感。その豊かな精神世界を体験しないまま人生を終えるのは、損だという気がしてくる。