小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。最新刊・小説『ホライズン』(文藝春秋から4月20日発売)。夫の仕事に伴い南半球で暮らす4人の女性たちの孤独と共感を描いた長編。
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。最新刊・小説『ホライズン』(文藝春秋から4月20日発売)。夫の仕事に伴い南半球で暮らす4人の女性たちの孤独と共感を描いた長編。
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 月に一度、飛行機で日本とオーストラリアを行き来しています。乗り換え時間を入れて片道14時間の旅。機内では寝るか、映画の最新作を見ます。

 映画を見るときに困ることが一つあります。私はよく泣くのです。機内では周囲から丸見えですから、ぐしゃぐしゃで鼻をすすっているのは、ちょっと恥ずかしい。

 でも先日は通路を挟んだ右隣の席のおじいさんが画面を見ながら笑ったり声を上げたり、自宅のリビング並みのリラックスぶりだったので、私も安心して「LION 25年目のただいま」でダダ泣きすることができました。

 肘の触れ合う距離でその様子を見ていた左隣の中年男性は、少しすると、コアラが主人公のアニメ「SING」を見始めました。そして後半、大きな肩を震わせて涙。その様子にちょっと感動していたら目が合い、「うん、それ意外とグッと来るよね」と微笑みを交わしたのでした。

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