支持率が35%に落ちる4日前、トランプ氏は選挙公約の目玉だった「医療保険制度改革(オバマケア)」撤廃のための勝負法案で大きくつまずいた。これが成立しないと、来年の中間選挙で「Bloodbath(大虐殺)」が起きると脅して共和党議員に賛成を迫ったが、完全撤廃を求める保守強硬派がいたり、急激な改変で保険を失う人の増加を懸念する穏健派がいたりして、党内調整は失敗。結局、下院での採決前に撤回せざるを得ず、大統領の政策実行能力に深刻な疑問符がついた。

「そもそも共和党主流派をつぶすと言って支持を得たわけだから、根本に大きなすれ違いがある。選挙中からトランプ氏を批判してきた共和党議員も結構いる。複雑で困難な議会では、トランプ流もなかなか通用しない。議会とのパイプ役は、やはり議員にしかできない」(同)

●中間選挙がやってくる

 その役割を期待されて政権入りしたペンス副大統領やプリーバス大統領首席補佐官とともに党内調整で汗をかくライアン下院議長らの荷は重い。党内部の溝に加え、反トランプで勢いづく民主党の抵抗も激しくなっており、トランプ氏の内政は、ますます立ち往生していく。ツイッターなどでの一方的な情報発信で世論操作を試みる能力はピカイチだが、実績が伴わないと、効果はどんどん薄れる。

 メキシコ国境の壁建設のための予算計上は来年度に先送りされた。8月の議会休会前に法案成立を目指す税制改革の内容もはっきりしない。通常は2月に議会に示されているはずの詳細な予算教書の提出も大幅に遅れている。実績が残せない内政から国民の目をそむけるために苦し紛れに打った手が、大統領権限の強い外交・安保政策だったという見方が出ている。
 実際、北朝鮮への圧力強化やシリア攻撃後、支持率は40%台に回復した。中林氏は言う。

「懸案が多い内政と比較すれば外交・安保で国内をまとめる難易度は高くない。安保政策なら共和党とも一つになりやすい」

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