小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。最新刊・小説『ホライズン』(文藝春秋から4月20日発売)。夫の仕事に伴い南半球で暮らす4人の女性たちの孤独と共感を描いた長編。
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。最新刊・小説『ホライズン』(文藝春秋から4月20日発売)。夫の仕事に伴い南半球で暮らす4人の女性たちの孤独と共感を描いた長編。
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 テレビのスタジオで、ときどきうんざりすることがあります。女性出演者が「ブサイク、デブ、ババア、独身」などと“自虐ネタ”を繰り出してスタジオが爆笑。男性出演者が「ハゲ、非モテ」をネタにトーク。中年の女性出演者に「よ、更年期!」、熟年男性出演者に「この人、もう立たないんだって!」、フェミニンな喋り方をする男性に「お前どっちだよ?」……どれも全然面白くないです。面白いと思わないお前はセンスがないと言われるかもしれないけど、それでも全然面白いと思えないんだから、しょうがない。

 こういうことを言うと「テレビに正義を持ち込む頭の固い優等生」などと批判されますが、日常生活では当たり前の感覚。職場で同僚をブスだハゲだEDだと笑いものにする人は、面白いどころか単に痛いハラスメント野郎だし、容姿の自虐ネタは周囲に気を使わせるだけ。やっていることは同じなのに、テレビだとそれが“盛り上がる話”としておなじみです。

 出演者は信頼し合っているし、呼吸を合わせるのには高い技術が必要なのは知っています。でもときどき、聞いていて嫌な気持ちになるのです。正しくないからじゃなくて、面白くないから、笑えない。共感できないし、不快だから笑えない。
 レストランやカフェに入ると、周囲のテーブルからひな壇トークみたいな会話が聞こえてきます。話を振る人がいて、いじられる人がいて、盛んに突っ込む人がいて……一体何人が本気で笑っているのかな。帰りの電車で一人になったときの疲れた顔を想像してしまいます。

 何を笑うかって、その社会の居心地を表している気がします。テレビを見ると、かえってしんどくなる人がいるんじゃないだろうか。そんなことを考えるのは素人なのかな。22年経ってもまだ、私はテレビの空気に慣れることができません。

AERA 2017年4月24日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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