ところが有事となれば直接の被害を免れない韓国や日本の政府内に、武力衝突間近のような緊張は感じられない。むしろ米側の圧力強化を支持している。そこには共通の認識と期待があると、南山大学の平岩俊司教授(現代朝鮮論)は見ている。

「日韓ともに戦争に至るような状況は反対だと思うが、米国が強い姿勢を示さないと北朝鮮が言うことを聞かないのも事実。(戦略的忍耐政策をとった)オバマ政権下、圧力がなかったから、時間だけ与えて北朝鮮の核能力が上がってしまった。頼る必要もなくなった中国の言うことも北朝鮮は聞かなくなった。戦争を起こすということではなく、北朝鮮に姿勢変化をさせるためには、米国が再び怖い存在になる必要がある」

●予測不能な米朝首脳

 トランプ大統領は11日、自身のツイッターで、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談の際、「中国が北朝鮮問題を解決するなら、米国との通商交渉はより良いものになると伝えた」と明かした。安倍晋三首相が「中国がどのように対応するか注目している」と話すのも、朝鮮半島の非核化には中国の役割が重要だと認識しているからだ。

「故金正日(キムジョンイル)総書記時代、ブッシュ政権の発足前には、それまであまりよくなかった中朝関係を改善しようと何度も中国に行きだしたことがある。トランプ政権が圧力を強めれば、北朝鮮は理屈の上では核・ミサイルを持つことが対抗手段だと言うだろうが、同時に中国の外交的な後ろ支えが再び必要になると考えるはず。中国にしてみれば、あまり日米と一緒になって圧力をかけると頼られなくなるから、さじ加減が重要だ」(平岩教授)

 では、米国による北朝鮮攻撃はないと考えていいのか。日本政府関係者は言う。

「北朝鮮がミサイルを発射したら迎撃するかもしれない。核実験をしたらミサイル報復もありうる。そう真剣に思わせるのが圧力だから、軍事行動がないなんて日米韓は絶対に言わない」

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