国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。政界随一「乗り鉄」「飲み鉄」の石破茂・前地方創生相に話を聞いた。
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鉄道好きになったのにきっかけなんてありません。もともと好きだったということです。ただ、思い出の列車と言えば急行「出雲」。小学1年の時、17歳年上の姉が東京で結婚式を挙げることになりました。その時、下の姉と故郷の鳥取から乗ったのが急行「出雲」。何というか、超感動。夜、列車が走るんです。しかも食堂車まであって。非日常ですよね。
分割民営化の時は国会議員になって2年目。まだ30歳でした。ただ、国鉄が赤字になったのは、政治家が悪かったのだろうという思いはありました。荒船清十郎さんという埼玉選出の国会議員がいて、1966年に彼が運輸大臣の時、自分の選挙区にあった深谷駅に強引に急行を止めさせ、世論の批判を浴びて辞任するという事件があった。
●我田引鉄で鉄道が赤字
政治家が国鉄を食い物にしたとはいわないけど、我田引鉄の面があった。自分の選挙区に鉄道を引くことによって、採算を無視しても票を取ろうと考え、赤字が増えていったという側面は否めません。当時の国鉄は大赤字で、しかもサービスが悪く、ストも多い。民間にするしかないという思いはありました。
「鉄道はもうからないといけない」という概念そのものが間違っているとは言わないけれど、世界の考え方とは違います。「鉄道は赤字でけしからん」という考え方は日本特有です。
たとえばフランスの鉄道は収入の中で運賃収入は2割。残りの8割は公的な支援です。もうかるのであれば、公共インフラである必要はありません。そもそも、北海道には車が一台も走っていない道路がいっぱいある。あれは大赤字です。だけど、誰も道路を廃止にしろなどとは言いません。いま1億2千万人いる日本人は、このまま行くと2100年には5200万人と半分以下になります。しかも高齢化が進む。「自動運転技術を発達させれば、鉄道なんかいらんのだ」という考え方がありますが、一方で定時性、省エネ、大量輸送に優れた鉄道に勝るものはないという議論もある。公的インフラとしての鉄道を考える必要はあるでしょう。