●リニア資金を北海道に
房総半島を横切る「いすみ鉄道」の鳥塚亮社長が面白いことを言っていました。「乗って残そう」と言っている間はダメ。地元の人が用もないのに乗るのではなくて、乗りたいと思う鉄道を造ることが大切だと。いすみ鉄道では、半世紀ほど前の国鉄カラーで塗ったディーゼル気動車を走らせています。車内広告も昭和40年代のまま。それを見て泣いて喜ぶ人がたくさんいます。鳥塚社長が言うのは、100人のうち99人がくだらないと思っても、首都圏には3500万人の人間がいてそのうち1%の35万人でもすてきだと思い、その人たちが乗ってくれれば大丈夫だ、と。いすみ鉄道は地方ローカル鉄道復活のモデル。必要なのは、逆転の発想です。
鉄道はつながってこそ力を発揮します。日本海側は新幹線と高速道路がつながっていないので、横の連係が恐ろしく悪い。だから私は、日本海側の国土軸を完成させるため、山陰新幹線の早期実現を訴えている。フル規格でなく、単線でも十分。それなら工事費は半分で済みます。
一方で、鉄道の魅力は非日常性にあると思っています。その意味で私は、非日常感のまったくないリニア新幹線にあまり魅力を感じません。リニア新幹線ができて、これでどうして東京一極集中の是正になるのかわからない。仮にリニア新幹線を造るお金をJR北海道に使うことができたなら、JR北海道はまったく変わっていたでしょう。JR北海道があんな状態になったのは、JR北海道の責任だけでなく、民営化の経緯も含めた国の政策にも理由があったと思います。
私は「乗り鉄」兼「飲み鉄」。個室寝台のA寝台に乗ったら、もうとことん飲みますよ(笑)。
(構成/編集部・野村昌二)
※AERA 2017年4月10日号