3月末に最終回を迎えた深夜アニメ「けものフレンズ」で多用された“やさしい”言葉がツイッターにあふれている。背後に何があるのか。
「わーい!」「すごーい!」「たーのしー!」「あなたは○○なフレンズなんだね!」
2月、普段は殺伐としたツイッターのタイムラインが、こんな“やさしい”ツイートであふれかえった──。
1月から放送が始まり先月28日深夜に最終回を迎えた深夜アニメ「けものフレンズ」(テレビ東京ほか)にちなんだツイートだ。放送時間には、ツイッターのトレンドに「けものフレンズ」が急上昇。
●人間の世界は失われた
女の子の姿をした動物「アニマルガール」と迷子の子が、巨大な動物園を旅する物語だ。ツイッターなどネットを中心に徐々に盛り上がり、ニコニコ動画での初回の再生回数は450万回を超えるヒットとなった。
「当初思っていた100倍くらい多くの人が見てくれた」
とアニメプロデューサーを務める制作会社ヤオヨロズの福原慶匡さんは話す。放送開始当初は、知る人ぞ知る作品だった。
「最初は、『また低予算の萌えアニメが始まったらしい』と聞いたんです」
漫画家の山田玲司さんは振り返る。ところが、人に薦められて見ると、
「これはマーケティングによって作られた単なる萌えアニメではない。作り手は何かを伝えようとして作っている」
と感じ、ニコニコ動画の自身の番組内で取り上げ、考察を行った。5頭身の女の子のキャラクターたちのゆるい会話、実在の動物園の飼育員らによる動物の解説など、一見、子ども向けアニメのようだが、20~40代に受け入れられた理由を、山田さんはこう考えている。
「若者に問題の全てを押しつけて、上の世代が逃げ切ろうとしているのが今の日本。若い人は未来がないし、日々泥のように働いている。そんな中で重いテーマや問題提起を投げかけられるハードなコンテンツにはうんざりしている。彼らは最悪な現実をわかっているからこそ、まったりとした日常を描くアニメに癒やされる」