●1度のミスでクビに
後にアケミさんは、あのマイケル・ジャクソンの私服をデザインすることになるのだが、マイケルとの出会いもトランプ・タワーだったという。
「居住者用エレベーターは4基。ある夜、仕事から戻るとエレベーター前に行列ができていた。一番奥のエレベーター前で親しいボーイが『乗る?』と聞いてきたのでラッキーと飛び乗ると、そこにマイケルがいました」
最近の仕事のことなどをボーイと話して降りた数分後、そのボーイが部屋に来て、マイケルがアケミさんの話に興味を持ち、彼女のデザインした洋服が見たいと言っている、と告げられた。プレス資料を渡したところ、2週間後には「シャツを作ってみてほしい」と頼まれた。
「それから2年間くらいかな、マイケルのプライベートの洋服を作るようになったんです」
トランプ・タワーに約3年暮らした後、ウェストサイドのトランプ・プレイスに移り、そこで約14年を過ごした。夫と死別し2013年に帰国後は、大阪府にスタジオを設立し、日本人だけでなくアジアの女性が世界に通用する「美」を磨くための指導に力を入れている。
「トランプ氏は、トランプ・プレイスにビルを建てるのに10年くらい裁判をしています。不利な側面もあったと思いますが妥協せず、勝訴した。彼はやると決めたら絶対に折れない。人にもすごく厳しい。私が住んでいたときも、10年間勤めたセキュリティーが1度のミスでクビにされたことがあります。その実行力が、悪い方向に働かないことを祈りたいですね」
(編集部・作田裕史)
※AERA 2017年4月3日号