

年末年始に実家に帰省して、親の老いを感じた人も多かったのではないだろうか。両親の介護や実家の管理、財産の処分、姑問題など、そろそろ考えてみませんか。AERA 2017年1月23日号では「家族問題」を大特集。
野村総合研究所によると、2033年に約3軒に1軒が空き家になる見通しだ。放置すれば「特定空き家」になりかねない。今からできる対策とは。
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「相続した時点で買い手なんてつかないと思っていました。子どもや孫の代まで負の遺産として引き継いでいかなければと」
都内に住む女性Aさん(57)は一昨年の暮れに母を、昨年に父を相次いで亡くし、山口県内にある父母それぞれの実家と埼玉県内の両親が住んでいた家の計3軒の空き家を相続した。なかでも母方の実家は築約100年が経っているうえ、すでに10年近く空き家状態で劣化も進んでいた。冒頭の発言はこの母方の実家についてのものだ。
木造2階建てで建物面積200平方メートル強、土地面積はその2倍という広大な家。空き家になって間もないころに不動産業者を通して800万円弱で売りに出したこともあったが、結局買い手はつかなかった。
「2万円強の固定資産税と、シルバー人材センターに委託している草刈りの料金を、払い続けることになると思っていました」
●空き家バンクで売約
ところが、そんな空き家の売却話が昨夏、とんとん拍子でまとまった。きっかけは相続手続きの際に、空き家の所在地の自治体から戸籍謄本などの書類とともに送られてきた「空き家バンク」のチラシだった。
このまま何もしないよりはとダメもとでバンクを運営する自治体の窓口に連絡。7月に空き家を自治体職員とともに訪れ、外観や内部の写真を撮影し、直後にバンクのホームページ上に物件情報を掲載してもらった。売却希望額は最低額の50万円に設定。すると、掲載から1カ月ほどで買い手が現れたのだ。
残り2軒の空き家のうち、山口にある1軒は親戚に譲渡。
「埼玉の実家は売却してもいいし、今は賃貸のマンションに住んでいるので、引っ越してもいいかなと思っています」
Aさんのように複数軒の空き家を相続するケースは、今後増えるとみられる。夫婦が互いに一人っ子だとすれば、少なくとも互いの実家2軒を相続することになるうえ、親が空き家のまま放置していた祖父母宅を相続するというケースも増えていく。世代を超えた相続が続く負のスパイラルに陥りかねない。