子どもや孫には「不要品」でも、当事者には一つ一つに思い入れがあるものだ(撮影/工藤隆太郎)
子どもや孫には「不要品」でも、当事者には一つ一つに思い入れがあるものだ(撮影/工藤隆太郎)
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【Before】もらい物が多く捨てられないというAさんの部屋/【After】窓の開閉ができるようになり、室内も数段明るくなった(撮影/工藤隆太郎)
【Before】もらい物が多く捨てられないというAさんの部屋/【After】窓の開閉ができるようになり、室内も数段明るくなった(撮影/工藤隆太郎)
駒崎五恵さん(右)と娘の本間ゆりさん(左)。衣類の仕分けを実行中(撮影/写真部・堀内慶太郎)
駒崎五恵さん(右)と娘の本間ゆりさん(左)。衣類の仕分けを実行中(撮影/写真部・堀内慶太郎)
考えずにパパッと選択するだけ(AERA 2017年1月23日号より)
考えずにパパッと選択するだけ(AERA 2017年1月23日号より)

 年末年始に実家に帰省して、親の老いを感じた人も多かったのではないだろうか。両親の介護や実家の管理、財産の処分、姑問題など、そろそろ考えてみませんか。AERA 2017年1月23日号では「家族問題」を大特集。その中から、積年のモノであふれる実家の片づけを、親との関係を悪化させずに、うまく進めるコツを紹介する。

*  *  *

「持ち物は上靴と、あとマスクもあったほうがいいかもしれません。覚悟しておいてください」

 アクト片付センター(以下アクト)が担当する実家の片づけ現場に立ち会えることになった。担当者の「覚悟して」という言葉に、ちょっと慄(おのの)く。

 昨年12月、東京都内の住宅街の一角。2階建ての2世帯住宅のAさん宅で、平日4日間かけての大片づけが始まった。住人は1階に住む80代のAさんと2階に住む50代の娘一家の計5人。依頼者は娘と孫娘だ。モノが捨てられないAさんの部屋は、足の踏み場がない状態。約5年前に認知症と診断され、足腰も弱り、室内でモノにつまずいて転ぶことを家族は心配していた。

「祖母と母はよく口論します。『勝手に捨てないで』と、祖母がごみ置き場に行って持ち帰ってくることもありました」

 そう話すのは孫娘の専門学校生、Bさんだ。家族でAさんを説得してきた。ようやくAさんが首を縦に振ったのは1年以上たってからだ。Bさんはネット検索で、今回依頼したアクトにたどり着いた。片づける場所は、1階のAさんの部屋、仏間、台所、そして外回りだ。見積もりでは「最高で100万円」と言われたが、「想定内でした。仕方ないです」(Bさん)。Aさんは「モノが捨てられているのを見たくない」と、片づけ当日もいつも通り、迎えのケアマネジャーと共に朝の8時半、デイケア通所で家を後に。

 片づけ開始のゴングが鳴った。まずは外回り。7人のスタッフが手分けし、大小の木々を、低騒音の小型チェーンソーで伐採していく。長年放置されていた物置の中身は、あふれるほどの布団の山、山、山……。Aさんは訪問販売やキャッチセールスなどで、布団や健康食品を大量購入していた。屋内もそれらに占拠され、その額はざっと見積もって1千万円超。「人を信じやすく、お人よし」という性格が仇(あだ)になった。健康食品は消費期限が切れ、さまざまなグッズも、もはや使い物にはならず、全て廃棄となった。

●廃棄物2トン車11台分

 1階のAさんの部屋は女性スタッフが担当し、一つひとつのモノをBさんと確認し、仕分けていった。大量の洋服は近所や親戚からのもらい物がほとんどだが、よく着るものを残して処分した。廃棄物は、建物内部と外部で合計2トン車11台分となった。最終的な料金は、78万1千円。作業代金とハウスクリーニングの合計から、リサイクル品買い取り金額を相殺した結果だ。決して安くはないが、Bさんは捜していた土地の権利書や実印、指輪なども無事に見つかり、満足している。

「でも、祖母はきれいになって喜ぶ一方で、『あまり捨てちゃイヤ』と最後まで抵抗していたので、ショックも受けていたようです」(Bさん)

 アクトのもとには、大小さまざまな片づけ依頼が舞い込む。

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