大きな影響力を持つマネーゲームの肥大化をどう制御するのか。金融取引税で新合意が形成できれば、色々な意味でパラダイムが変わります。注目すべき新しい政策科学です。ウォール街とシティーをどう縛るのかが、資本主義の死に至る病を避ける唯一の点になるかもしれません。常に新しい政策論を提起する欧州の発想は、まだまだ面白い。
もう一つ、欧州の混迷でも米国のトランプ現象でも見られたのが、高齢層によるシルバーデモクラシーという状況です。ブレグジットは43歳以上の有権者が、欧州に残りたい若者たちとは逆の選択をした結果、実現しました。米大統領選も被害者意識を掲げた高齢者たちの選択です。日本でも、高齢者ほど金融資産の大半を持っているため、株が上がれば結構だという心理でアベノミクスに賛同しています。
高齢化率が4割を超すと、有権者ベースでは5割。さらに若者より投票率が約2倍高いから有効投票の約6割を高齢者が占めます。老人の老人による老人のための政治をもたらしているのではないか。シルバーデモクラシーの問題提起です。大きなインパクトを持つこの傾向は17年以降、一層深まると認識するべきです。
(構成/編集部・山本大輔)
※AERA 2017年1月16日号