
安倍晋三首相が、オバマ米大統領とともに果たしたハワイ真珠湾の慰霊訪問。両首脳は、日米関係を強化したというレガシーを、トランプ次期大統領に見せつけようとした。
「1千人もの若者が、彼らが信じた自由のために戦い、命を落としました。ここでは死者に、敬意を示してください。私語や携帯電話のショートメッセージはしないでください」
マービンという若い職員が、観光客に真剣な顔で訴え、皆が拍手を送った。真珠湾内に佇む「アリゾナ記念館」は、旧日本軍によって撃沈した戦艦アリゾナの残骸が沈む海の上に、白い架け橋のように浮かぶ慰霊の施設だ。日米両首脳が訪れた12月27日の前日、記念館のビジターセンターは、クリスマス休暇で訪れた数千人の観光客でごった返していた。
●「やっと機が熟した」
「フェイスブック、ポケモンGOもダメです」
同行のガイドが釘を刺す。安倍首相とオバマ大統領が訪れ、花びらを撒(ま)いたここは、今も死者が海中に眠る、いわば「墓場」だ。真珠湾で命を落とした2400人のうち、約1千人がアリゾナの乗員で、日本の現職の首相が記念館を訪問するのは初めて。その歴史的意味は、ハワイ住民と米国人にとって計り知れない。
同記念館内の説明員でベトナム戦争の退役軍人、レイ・ファーブル氏(78)に、安倍首相の訪問について聞くと、薄青い瞳が輝き、記者の手を握り、こう言った。
「やっと機が熟したんだ。素晴らしい。日米関係がこれまでにないほどよくなる」
ロサンゼルスから同館を訪れていた元外科手術医助手ジム・バイクロフト氏(64)もこう言った。
「オバマ大統領が被爆地・広島を訪問したから、安倍首相が真珠湾に来て、いろんなことがこれで落ち着いた。不幸なことがあったが、ありがたいことに、日米は今や友人だ。安倍首相の訪問で、(関係は)今後さらに強まる」