緊張感の高い試合でもミスなく演技できる確率を高めて、抜け出す者は誰か。FSについて、
「本当は来シーズン完成させられればと思っていた」
という羽生は、ライバルに追い上げられているという危機感からか、
「いまの悔しさ的には、今シーズンの後半には完成させたい」
と計画の前倒しを宣言した。
「悔しいし、点数を上げて、誰からも追随されないような羽生結弦になりたい」
■浅田真央「不調」でも出場枠3を取れるか
2015年世界国別対抗戦以来のガッツポーズだった。
GPファイナルの女子FSで、ほぼミスのない演技をした宮原知子(18)。「強い女性」を演じきり、握りしめた両拳を頭の上に振り上げた。
「SPで思った以上の点数が出たので、このチャンスを絶対逃したくなかった。きっといい点を出してくれるという思いがあった。いけるという気持ちを持つようにしました」
FSと合計で、浅田真央(26)の日本女子最高記録を超え、実力で銀メダルをつかんだ。
今季前半、課題であるジャンプの回転不足克服に苦心した。練習では高さが出るのに、試合になると縮んでしまう。悩んだことで試合で硬くなり、ますます跳べなくなる。多くの選手が、そんな悪循環で崩れていく。
自信を持つために、出水慎一トレーナーとガッツポーズを練習した。出水トレーナーは、
「これが(集中する)スイッチになる」
と話す。「はい、ガッツポーズ」と言われて手を上げることを繰り返すうち、宮原は演技のいいイメージを持てるようになったという。
平昌五輪で日本の女子が出場枠「3」を確保することを考えると、宮原の成長は大きい。出場枠の多くは、17年3月末から4月にかけてフィンランド・ヘルシンキで行われる世界選手権で決まる。3人が出場する日本は、上位2人の順位の合計が13以内なら3枠。それを超えると2枠以下になる。
昨季の世界選手権では、宮原が5位、浅田が7位だった。頼りの浅田はいま、長く競技を続け、高い負荷をかけ続けてきた影響でひざがすり減り、痛みが走ることもある状態。今季のGPシリーズは、初戦のスケートアメリカで6位、2戦目のフランス杯ではミスを連発して過去最悪の9位。滑りにはスピードがなかった。
世界選手権で表彰台争いができるという「計算」が立つのは、現在のところ宮原のみ。五輪の出場枠取りに向けて、他の選手にかかる重圧を減らすことができるだろうか。(朝日新聞スポーツ部・後藤太輔)
※AERA 2017年1月2-9日合併号