「今の流通は、売り手都合で魚種を絞っていたりする。インターネットをはじめさまざまな手段を使いながら課題を克服し、売り手都合から買い手都合に戻していくということをやっていますね」

 社長の松田雅也さん(36)はこう話す。漁獲量と魚価は日々の変動が激しい。しかも仕入れは午前中の一発勝負で、午後に買い足すことはできない。各地の魚価と漁獲の情報をにらみつつ、産地市場で買うべきか、築地のような大市場で買うべきかを判断、顧客の購買行動を予測しながら行う仕入れは「かなり難易度が高い」(松田さん)という。

 指針となるのが、仕入れ先や顧客からリアルタイムで上がってくる情報だ。メール、FAX、LINEなどで送られてくる。

「飲食店がそのときどきでほしいものをどう集めるか。ベンチャーとして、テクノロジーを使いながら大きい会社ができない面倒くさいことをいかにやるかですね」

●お客の満足度を最大化

 松田さんはもともとIT業界で働いており、たまたま接点を持った水産業界の非効率さに流通改革の必要性を痛感したのが創業のきっかけだった。

「生鮮流通以外の分野では、お客様の満足度を最大化するために、流通とサプライヤーが情報を共有し、在庫をしっかりコントロールするようになっている。お客様からサプライヤーまでの情報伝達を速くし、流通の効率をよくするということに水産分野でも取り組んでいこうと」

 目指すのが、漁師から仲卸、荷受け、料理人に至る鮮魚の流通に携わる人々の間で情報を共有するネットワークを形成し、仮想企業体をつくることだ。

「その連携をベースに1千億円とか3千億円とかの売り上げ規模を押さえられるまでいければいいなと」

(編集部・山口亮子)

AERA 2016年12月5日号