大手スーパーが経営する地方都市の大型ショッピングモールに中古品売買の店を構える男性(59)。店の営業時間は、スーパーに合わせざるを得ず、朝9時から夜9時まで。しかも年中無休だ。夫婦と息子、パート2人で店を回すが、親類の結婚式や葬式にも家族全員では参加できない。盆も正月もなく、旅行も難しい。それでも、セキュリティーや顧客にとっての利便性などでメリットが大きく、スーパーを出ていけないという。

●1日休んでもプラス

 大型スーパー内で働いて37年。当初は休館日が年に36日あったが徐々に減り、00年に大規模小売店舗法が廃止されて閉店時間や休館日の規制がなくなった結果、現在は0日だ。長時間労働による日々の疲労に加えて売り上げ不振が続くと胃が痛み、食も進まなくなる。男性は、

「スーパーは大手2社の競争が激しく、現場の人たちに無理を押し付けている。百貨店、スーパー、コンビニにはそれぞれの役割があり、スーパーが年中無休で朝から夜まで店を開ける必要もないと思うんですけどね」

 とぼやいた。

『日本の消費者はなぜタフなのか』の著書がある中央大学の三浦俊彦教授は、

「もはや知られたことですが、日本の消費者は商品やサービスへの要求が世界一厳しい」

 と指摘する。そんな消費者がいたから日本の製造業は競争力をつけることができたのだが、

「日本企業は先回りして商品やサービスを開発することで、消費者を甘えさせてしまっている」

 消費者の利便性向上や売り上げ競争のために、サービスは手厚くなる一方。だが、それを見直そうという動きも、少しずつ出始めている。

 今年1月、百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスが首都圏の伊勢丹、三越の計8店舗で前年まで初売りを行っていた2日の営業を取りやめた。従業員らの負担軽減が目的だ。5年前、老舗「虎屋」の黒川光博社長ら百貨店に出店している企業が「休業日を増やして」と申し入れていた。

 同ホールディングスによると、1月2日を休業にしたことで、社員や出店企業の販売員3万人弱が休めたという。昨年までは初売りの準備で元日も出勤する人がいたが、そんな人たちも休めた。社員や販売員からは「百貨店に入った以上、お正月はないと思っていたのでうれしい」「1月3日の初商いはやる気を持って臨めた」という声が寄せられたという。顧客からのクレームもなく、1月2日に休業した基幹店の伊勢丹新宿本店と三越銀座店では、一日分の売り上げがゼロになったにもかかわらず、1月全体の売り上げは前年同月比でプラスだった。

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