ヘリパッドは、高江集落を取り囲むように6カ所の建設が計画されている。すでに完成した2カ所では、米海兵隊のオスプレイが昼夜を問わず訓練に使用。高江では今年6月の夜間(午後7時~午前7時)の航空機騒音発生回数が、2年前と比べて約24倍の383回に上った。
一方、北部訓練場の部分返還を「負担軽減」の目玉にしようとヘリパッド建設を急ぐ政府は9月、工事に使う大型車両を自衛隊のヘリコプターで搬送。10月8日には菅義偉官房長官が沖縄を訪問し、高江区への直接的な財政支援を検討する意向を示した。
「現場では夜を徹し、今この瞬間も海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が任務に当たっている。今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」
9月26日の所信表明演説で安倍晋三首相は安全保障環境の変化やヘリパッド移設に触れたうえで、こう訴えた。安倍首相に促された自民党議員は一斉に立ち上がって手をたたき続け、約10秒間、演説が中断した。「起立」と「拍手」への批判は上がったが、演説内容に異論をはさむ声は目立っていない。
しかし、沖縄では安全保障政策を巡って混乱が続いている。高江では、沖縄戦を体験した車いすの女性(87)が機動隊とのもみ合いで小指を切って5針を縫うけがをした。取材記者が機動隊に強制排除される事態も起きた。地元紙は、高江で市民を排除する際、耳元で暴言を浴びせる機動隊員がいるとも報じている。辺野古海域でも、海上保安庁の「過剰警備」が問題視されてきた。
為政者が命じた任務にどのような意味があるのかは、置かれた立場によって受け止め方が異なる、ということに想像力を働かせる必要がある。今回の監査請求はそう訴えている。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2016年10月24日号