●ワイルドなほうを選ぶ
メール世代で、「電話での連絡はどうしてもハードルが高い」という部下たちのために、国立国際医療研究センター医師の竹下望さん(40)は、「どんなときに上司に電話して判断を仰ぐか」を明確に定めた。
院内感染という最悪の事態も想定される感染症患者が来た場合は、竹下さんが担当の日なら夜中でも、電話がかかってくる。
「システムを決めたことで部下も迷わず電話できるようになって、ストレスが少なくなったようです。僕たちも、部下が『一任されているから大丈夫』と突っ走ることを防げるようになりました」
複数の選択肢のうち、どれを選ぶのもありだ、万一選択を誤ってもカバーできそうだ、と思うことについては、「一つ下のポジションの人に判断してもらって」と指示するのも竹下さん流のコミュニケーション。
「医師は『判断すること』をトレーニングしていかないといけない。その機会を早いうちからできるだけ多くもうけてあげたいと考えています」
ヤフーの長谷川琢也さん(39)は、「上司は部下の才能と情熱を解き放つ」という会社のミッションを意識して、部下と相対している。
「枠とか組織とか、目に見えないものは気にせずに動くようにいつもアドバイスしています。元上司でいまはヤフーの社長である宮坂学が言う『迷ったらワイルドなほうを選べ』という言葉も、よくメッセージとして伝えていますね」
各自の創造性がものをいうエンターテインメントの現場では、リーダーの指示の出し方がクオリティーを左右する。USJの津野庄一郎さん(46)は、スタッフにはある程度自由を与えるよう意識している。
「ショーの中で押さえたいポイントとその理由だけはしっかり話して、あとは自由に発想してもらいます」
それはなぜか。
「プロデューサーの僕が、自分のイメージを1から100まで演出家に伝えてしまったら、彼らの存在意義がなくなってしまう。僕の仕事は、彼らの仕事と会社の戦略との間にズレがないように、かじ取りをすることですから」
(編集部・福井洋平、高橋有紀、竹下郁子)
※AERA 2016年10月10日号