上:仕事と収入が減る医師が出るなど、格差が広がると思います。国はやたらとチーム医療を推していますが、私は、若い医師たちには「チーム医療はやめておけ」と言っています。東京ではここ10年、一部の専門病院に患者が集中する一人勝ち状態が続いているからです。チーム医療はこうした大病院でこそ、機能するものです。
ところが、大病院は医師やスタッフも多く人数が飽和しているうえ、序列があって、完全に買い手市場です。労働力は買いたたかれてしまう。臨床経験も満足に積めるかどうか、わかりません。
これからは自分の腕一本で勝負できる診療科が強くなるでしょう。乳がん、眼科、泌尿器科は一人でもできます。海外で需要のある科ならなおさらです。フリーランスで働く眼科の服部匡志医師は、ベトナムと日本を股にかけ、1万件以上の白内障手術を行いました。日本の医療が破綻しても、内視鏡などの技量があれば、混乱期に海外で腕を磨けるんです。
K:医師個人に付加価値があれば、いかようにも活躍できるということですね。
上:必要な変革のリーダーシップをどこが取るのか。マスコミも国民も国に丸投げしたがりますが、国がやるべきことは、情報開示をする仕組みをつくること。どんなに優秀であっても、国はサポーターであって指揮者じゃない。指揮をとるなら、それは社会主義です。
K:20世紀のソ連は破綻しましたね。パンを買うのに行列ができていたかつてのソ連と、大学病院に行列ができている現在の日本の医療は、極論すれば同じことだと思います。足りていない資源に、群がっている。
上:国が医療の総量規制をやっているからですよね。
K:医師数を国家管理しようというのが、そもそもおかしいと思います。国が行うべきは、医療規制ではなく、公衆衛生と感染症対策でしょう。
先日の麻疹の発生では、直ちに介入する意思表示をすべきでした。ところが、ワクチンの備蓄や緊急輸入も行わず、予防接種をしろとも言わなかった。何もしなかった。よくないパターンです。2020年の東京開催を考えれば、五輪関連予算に計上してもよい案件でしょう。