少子高齢化が進む中、医療費が膨らみ続けるニッポン。「もう持たないのでは」と誰もが不安を覚えている状況に「もはや一刻の猶予もない」と警告する厚生労働省幹部が現れた。医療ガバナンスの専門家、上昌広(かみまさひろ)さんが、その見方に切り込んだ。
上昌広さん(以下、上):日本の医療財政に破綻(はたん)が迫っている。そう考えておられると聞きました。
厚労省幹部(以下、K):はい。社会保障財政も医療財政も、皆保険制度も破綻の瀬戸際です。
国民健康保険の収支を見ると、毎年若干の黒字に見えますが、保険料収入と同等もしくはそれ以上の国庫支出金に支えられています。本来は赤字続きで、すでにシステムとしては破綻しているんです。
上:2014年度の総額が40兆円、15年度は41.5兆円と、医療費は膨張する一方です。団塊世代が75歳以上になる25年に向けて、今後ますますシビアになることが予想されます。
K:税金を補てんし続けるのか、保険料や自己負担を上げるのか、選択肢は限られています。国債の発行も税金の負担増も、限界にきている。じき、膨らむ医療費に対応しきれなくなる。個人的な考えでは、25年まで現行制度が持つかもあやしい。消費税率の引き上げも10%では到底足りないでしょうし、引き上げがうまくいかなければ、最短5年で、医療制度は破綻します。
上:予想以上に早い破綻ですね。官僚たちは、その危機を理解しているんでしょうか。
●対処は破綻してから?
K:財務省は、医療費の伸びを分析し、警告もしている。議論したがっていると思いますよ。一部の厚労官僚も認識しているはずですが、割り当てられた予算でしのいでいれば、責任は追及されない。結局、さまざまな支払いが滞り、破綻が現実的になってから、対処しようということになるのでしょう。
上:なぜ、ここまで膨らんだのでしょう。
K:構造的な問題です。採算のとりようがない。現状のシステムは、受給者は受けたいだけ医療を受けられ、医療サービス提供者へも出来高払い。全員で保険料・税金と国の財源に群がっている。依存しているのは、国の財布に加え、国債という次世代のお金です。悪質だと思います。
上:そもそも、制度自体がおかしいということですね。