バスと鉄道の中間的存在として「中量輸送」を担う。人口数十万人規模の中核都市の輸送にマッチし、高齢者や子連れでも乗り換えしやすく、環境にもやさしい。『地域再生の戦略』などの著書がある関西大学教授の宇都宮浄人さんはこう語る。
「日本では高齢化が進んで車に頼れない層が増えていることに加え、年配の人だけでなく若い人も町なかに出てこなくなっている。気軽に乗り降りしやすいLRTはそういう人々に町に出るきっかけを与え、都市を再生させるツールになるのです」
●乗り入れで利用者3倍
国土交通省は「人と環境にやさしい公共交通」として、05年から「LRTプロジェクト」を推進。06年にはJR西日本の富山港線がLRT化され、富山市などが出資する第三セクター「富山ライトレール」として生まれ変わった。JR時代に比べ倍以上増発されたこともあり、15年度の輸送人員は205万人と開業前に比べ倍以上に増えている。開業直後のアンケートでは、60代以上の利用者数は平日で3.5倍、休日で7.4倍に。富山市では09年に富山地方鉄道が運営する路面電車も延伸して環状運転を始めるなど、公共交通機関を軸に都市機能を集約する「コンパクトシティー」づくりを推し進めている。
富山以外の都市でも後述する東京都豊島区に加え、前橋市、静岡市、新潟市、三重県四日市市、京都市、堺市、神戸市などでLRT構想が続々と持ち上がった。その中で宇都宮市に先立ち今年、LRT網を拡大したのが福井市。福井市と北の坂井市、東の勝山市を結ぶ「えちぜん鉄道」と、南の越前市を結ぶ「福井鉄道」がLRTによる相互乗り入れ運転を始めたのだ。
福井市内の一部区間で道路上を走る福井鉄道は、06年に駅のホームを低床化しLRTの導入に備えた。えちぜん鉄道側も福井鉄道との接続駅だった田原町駅から鷲塚針原駅までの駅を低床化し、田原町駅を改修して両鉄道会社がLRTで乗り入れられるように。LRT車両も環境省の補助金を活用して2編成導入した。総工費は約26億円で、乗り入れを始めてから3カ月間の乗り入れ区間の利用者は昨年同時期に比べ3倍に増えた。
えちぜん鉄道福大前西福井駅で乗り入れ列車を待っていた近くの私立高校2年女子(17)は、「これまで20分かけて隣駅まで歩いていましたが、その時間が一気に短縮されて早く帰宅できるようになった」と語る。