●バスに比べて高コスト
とはいえ、日本でのLRT普及はなかなか進まない。富山や福井など既存の鉄道をLRT化したところ以外の都市では、計画が頓挫したり検討段階から進まない都市がほとんどだ。世界では1978年にカナダのエドモントンでLRTが開通してから2015年までに150以上の都市でLRTができている。前出の宇都宮さんは嘆く。
「海外のLRT普及率に比べて日本は圧倒的に遅れています」
LRTのデメリットの一つは建設費用だ。地下鉄に比べれば安いが、専用道路や2台つなぎのバスを利用する「BRT」(バス高速輸送システム)に比べれば高くつく。LRTを検討していた新潟市はBRTに計画を切り替えた。宇都宮市の今井恭男市議(民進党)は批判する。
「LRTの総工費は458億円、BRTなら1台1億円としても20台を20億円で整備できる。まずBRTを走らせ、利用客数を把握してからLRTを検討しても遅くないはず。そもそもLRTでは物流に対応できず、本来ならば自動車も走れる道路や橋を造るのが筋」
●自動車依存を変える
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、初期投資に見合うだけの輸送力がLRTでは確保しづらいと分析する。
「鉄道ならば運転士1人と車掌1人で千人の客を輸送できるが、LRTだと千人を輸送するには10人の運転士が必要。特殊な免許も必要でコストがかかる」
法律上、時速40キロ以上は出せないという制限もある。他の鉄道に比べて、自動車などとの接触事故も多い。
「街中心部の駐車場を高額にするなど、車を減らす施策がなければLRTは困難」(梅原さん)
一方で宇都宮さんは、公共交通に収益性を求める日本のシステムそのものに異論を唱える。
「海外ではレール敷設や駅建設などの初期投資は完全に公費だし、ランニングコストをまかなえている都市もほとんどない。フランスでは、ランニングコストの5割程度は行政による補助で、街づくりのため運賃を下げているのです」